資金繰りが一旦落ち着くと、正直ほっとしますよね。私自身、長年会社を経営してきて、この「一息つけた瞬間」に肩の力が抜けた経験は何度もあります。
ただ、このタイミングこそが実は一番危ない。
売上の波、税金の支払い、借入返済の増減など、資金繰りは必ず次の山が来ます。落ち着いた今は、目の前の火消しではなく「再発させない準備」をする時間が取れる貴重な時期です。
資金繰りの準備とは、何か特別なことをすることではありません。再び慌てないための考え方と、数字を基準にした仕組みを先に整えること。ここを曖昧にしたまま進むと、数ヶ月後に同じ不安を繰り返すことになります。
資金繰りが「落ち着いた」の定義を社内で揃える
まず最初にやるべき準備は、「本当に資金繰りが落ち着いたのか」を感覚ではなく数字で確認することです。社長一人の安心感と、会社の実態がズレているケースは少なくありません。
最低限見るべきなのは、月末の現預金残高、運転資金が何ヶ月分あるか、そして入出金のタイミング。
これらを見て「何が起きても〇ヶ月は耐えられる」と言える状態かどうかが判断基準になります。
この定義を社内で共有しておくと、「今は攻めていいのか」「まだ守りか」を数字で会話できるようになるので、資金繰りは社長の勘ではなく、共通言語を持つことが大切です。
資金繰りの見える化:資金繰り表は週次か月次か
社員20〜30名規模であれば、基本は月次の資金繰り表で十分です。
ただし、季節変動が大きい業種や繁忙期がはっきりしている会社は、週次での確認も検討すべきかと思います。
重要なのは頻度ではなく目的です。資金繰り表は「過去を振り返る」ためではなく、「先を予測し、判断する」ために使います。最低でも3〜6ヶ月先までの見通しが立つ形にしておくと、準備の精度が一気に上がります。
“一時的に増えた現金”と“継続的に増える現金”を分けて考える
資金繰りが落ち着いたように見えても、その中身は要注意です。補助金の入金、借入、支払いの先延ばしなどで一時的に現金が増えているだけの場合があります。
この現金を「使っていいお金」と勘違いすると、後で必ず苦しくなります。大切なのは、本業で継続的にキャッシュが残っているかどうか。この切り分けが、次の準備の前提になります。
次にやるべき準備①:手元資金のルール化
資金繰りの準備で最も効果が高いのが、手元資金のルール化です。これは精神論ではなく、数字で会社を守るための仕組みです。
「最低でもこの金額は絶対に減らさない」というラインを決め、それを超えた分だけ投資や繰上返済に回す。この順番を逆にすると、また不安な状態に戻ります。
手元資金は何ヶ月分を目安にするか
目安としてよく言われるのは、固定費の3〜6ヶ月分です。ただし、売上の安定性や業種によって適正は変わります。
私がよくやるのは、「最悪のシナリオ」を一度数字に落とすことです。売上が〇%落ちたら、何ヶ月耐えられるか。この計算をすると、漠然とした不安が具体的な数字に変わり、判断しやすくなります。
先に払うものを洗い出す:税金・賞与・返済・更新費
資金繰りが急に苦しくなる原因の多くは、「忘れていた支払い」です。税金、賞与、借入返済、保険や契約の更新費など、年間で必ず出ていくお金を一度すべて洗い出しましょう。
支払い月が偏っている会社ほど、この準備の効果は大きくなります。見えていれば、怖くありません。
次にやるべき準備②:借入と返済の再設計
資金繰りが落ち着いた今こそ、金融機関と話をする絶好のタイミングです。苦しいときより、余裕があるときの方が選択肢は広がります。
返済額が今後のキャッシュを圧迫しないか、短期借入に頼りすぎていないかを整理し、必要であれば条件の見直しも検討します。これは弱気な行動ではなく、会社を守るための準備です。
金融機関に出す説明材料の資金繰り表・月次試算表・今後の見通し
金融機関とのやり取りは、交渉ではなく「共有」という姿勢が大切です。そのために必要なのが、資金繰り表、月次試算表、そして今後の見通しです。
ここで重視されるのは利益よりもキャッシュの流れです。数字を整理して説明できるだけで、相手の反応は大きく変わります。
資金繰りが落ち着いたときにやっておけば良かった準備
私自身、資金繰りが落ち着いた途端に設備投資を急ぎ、その直後に税金と返済が重なって一気に苦しくなったことがあります。あのとき、手元資金のラインを決めていれば、あそこまで慌てずに済みました。
落ち着いたときほど、人は楽観的になります。
だからこそ、感情ではなく仕組みで判断する準備が必要だと、今でも強く感じています。
次にやるべき準備③:粗利と固定費の点検
資金繰りの安定は、売上の大きさよりも粗利構造と固定費の設計で決まります。売上が落ちても耐えられる形になっているかを確認しましょう。
ここを後回しにすると、忙しいのにお金が残らない状態から抜け出せません。
商品・案件ごとの粗利を見える化して「やめる判断」を持つ
商品や案件ごとに粗利を見える化すると、「頑張っているのに資金繰りが楽にならない理由」がはっきりします。
すべてを続ける必要はありません。何を残し、何をやめるか。この判断基準を持つことが、社長の重要な役割です。
固定費の危険サインの人件費・家賃・外注費・サブスク
人件費、家賃、外注費、サブスク。これらは一度増えると下げにくい固定費です。削減ありきではなく、今の売上規模に対して適正かどうかを冷静に見直します。
次にやるべき準備④:入金サイトと支払いサイトを整える
利益が出ているのに資金繰りが苦しい場合、多くは入金と支払いのタイミングに原因があります。ここは比較的、短期間で効果が出やすいポイントです。
交渉は順序が大切です。前受け、分割、支払い方法の工夫など、現実的な選択肢を一つずつ検討します。
売掛の回収ルールと督促の仕組み
売掛金の回収を社長が一人で抱えると、感情が入りやすくなります。営業、経理、社長の役割分担を決め、仕組みとして運用することが準備になります。
仕入・外注の支払い条件を見直すときの注意点
支払い条件の見直しは、強引に進めると信用を失います。長期的な取引を前提に、誠実に相談する姿勢が重要です。
次にやるべき準備⑤:モニタリングの仕組み化
資金繰りを安定させる最後の準備は、モニタリングの仕組み化です。気合や根性では、状態は維持できません。
毎月決まった数字を見て、決まったタイミングで判断する。この流れを作るだけで、社長の不安は大きく減ります。
現預金・運転資金月数・売掛/買掛・借入返済予定
これだけ見れば判断できる、という数字セットを決めましょう。全部を見る必要はありません。続けられる形が大切です。
資金繰りが悪化する前兆チェックリスト
入金遅れの増加、在庫の増加、値引きの常態化、固定費のじわじわ増加。これらは資金繰り悪化のサインです。
不安になったときに見返せるチェックリストを持っておくと、冷静に判断できます。
資金繰りが落ち着いた社長が最初に固めるべき「準備の順番」
資金繰りが落ち着いた今、最優先でやるべき準備は順番があります。見える化、手元資金のルール化、返済の再設計、粗利と固定費の点検、サイト条件の整備、そしてモニタリングです。
資金繰りは才能ではなく、考え方と仕組みで安定します。落ち着いている今こそ、次に慌てないための準備を一つずつ進めていきましょう。
※記事の真偽性及び、記事の内容を実行した場合の効果などを保証するものではありません。こちらの情報は、ご自身の自己責任でご活用ください。


コメント