社長が見落としがちなキャッシュフローの「問題点」とは
キャッシュフローは、会社を動かす「血液」に例えられます。それにも関わらず、多くの社長が“利益”ばかりに意識を向け、現金の流れを細かくチェックしていません。ここに、資金ショートの大きな原因があります。会社は利益で倒れるのではなく、資金が尽きたときに倒れます。だからこそ、キャッシュフローの理解は経営者にとって不可欠です。
特に注意すべきは「PL(損益)と資金の動きのズレ」です。売上を計上したタイミングと、実際に現金が入ってくるタイミングは一致しません。同じように、費用計上と支払いタイミングもズレます。このわずかな差が積み重なると、黒字なのに手元にお金がないという状況につながります。
例えば、売上1,000万円を計上しても、入金が翌々月になる会社は珍しくありません。
利益としては計上されていても、現金はまだ会社に入っていません。一方で、外注費や人件費は先に出ていくため、月末の残高が急に減ることもあります。
PLは「発生主義」で作られていますが、会社の資金繰りは「現金主義」で動いています。この構造を理解していないと、決算書では判断できない落とし穴にはまります。
つまり、キャッシュフローの問題は「気づきにくい」からこそ危険なのです。特に社長は日々の業務に追われ、数字の詳細を深堀りする余裕がなくなりがちです。
見えていないズレを放置したまま経営していると、ある日突然、資金不足が現実のものになります。
私も経験したキャッシュフローの“地雷”
私も会社を立ち上げて数年は、「毎月PLを確認していれば問題ない」と考えていた典型的なタイプでした。
しかし、キャッシュフローの見直しを怠り、いくつもの地雷を踏みました。今振り返っても、その時の焦りと冷や汗は忘れられません。
特に鮮明なのは、ある年の税金支払いです。利益が出ていた年だったので、それなりに税額が大きくなることは覚悟していました。しかし実際に通知が届くと、予想よりも百万円単位で大きかった。さらに消費税と法人税の支払いが同月に重なり、300万円弱の資金が一度に出ていきました。資金繰り表を作っていなかったため、「そんなにインパクトがある」と事前に把握できなかったのです。
また、賞与のタイミングでもヒヤッとしたことがあります。賞与はPL上では費用として処理されますが、実際の支払いは手元資金から一気に出ていきます。当時は売掛金の入金がずれ込み、賞与の振り込み日と重なったことで、一時的に資金残高が危険ラインに到達しました。
「売上は伸びているし、決算も黒字だから」と安心していた自分が、いかに浅かったかを痛感しました。
さらには、売掛金の回収遅延も大きなストレスでした。ある取引先からの入金が1ヶ月遅れただけで、予定していた支払いができず、銀行に相談に行く羽目になりました。決算書をいくら眺めても、この“タイミングの歪み”は見えてこないのです。社長は「数字を見ているつもり」では不十分で、「現金がいつ動くか」を把握しなければなりません。
私の経験から強く言えるのは、キャッシュフローの問題は「事前に知っていれば防げる」ということです。次の章では、決算書では見えない地雷を具体的に整理していきます。
決算書だけでは見えない「見直すべき地雷項目」
キャッシュフローを悪化させる地雷は、決算書上では平準化されてしまうため、非常に見つけにくいのが特徴です。決算書を毎月チェックしている社長でも、これらの負担時期を把握できていないケースが多いのです。
まず押さえておきたい地雷は以下の通りです。
- 税金・社会保険料の支払い時期のズレ
- 保険・システム・リース料などの年額支払い
- 設備投資の支払い条件(実際の買い時)
- 賞与・退職金のまとまった支出
- 売掛金回収サイクルと仕入・外注費支払いサイクルのギャップリスト
たとえば年払いの費用は、決算書上は12ヶ月で均等処理されますが、実際の支払いは「特定の月にドン」と来ます。これを知らずに資金繰りを組んでいると、突然残高が減り、慌ててしまうことになります。
設備投資も同じです。減価償却費として少しずつ費用化されるため、決算書では支出の影響が見えません。しかし実際の支払い方法によっては、購入時に大きな資金が流出します。会社の資金繰りを乱す大きな要因になりやすい項目です。
特に注意すべき「短期的に資金を奪う」項目
短期でインパクトが大きいのは、消費税・法人税などの税金と、仕入・外注費です。
とくに消費税は売上規模が増えると負担額も比例して増え、支払月の負荷が極端に高くなります。税金の支払いは避けられないため、事前準備の有無がすべてを分けます。
また、仕入先への支払いサイトが短い会社は、売掛金の入金前に現金が出ていくため、短期的な資金繰りがひっ迫します。黒字倒産の大半は、このサイクルのズレが原因です。利益よりも「現金のタイミングを優先して管理する」意識が重要です。
中期で効いてくる「積み重なって効く」項目
中期的に効いてくるのは、固定費の年払い、更新費用、そして減価償却費と実際の支出のズレです。年払いの保険料やシステム費は、支払月にだけ負担が爆発します。毎月の決算書では均等に見えるため、意外と見落とされやすい項目です。
さらに、減価償却費は「現金が減らない費用」ですが、裏返すと設備購入時の支払いが数字として見えにくくなります。PL上は黒字でも、キャッシュフローには大きな負担となるケースが多いのです。
長期の落とし穴「設備投資と借入返済」
長期の観点で最も危険なのが借入返済です。返済元本は損益計算書に載らないため、社長が見落とす大きな地雷です。PL上は黒字でも、返済額が重くのしかかり、毎月のキャッシュフローを圧迫します。返済が続く限り、会社は継続的に現金を失い続けます。
設備投資も要注意です。設備を購入するときの支払い方法によっては、一時的に大きな資金が流出したり、リースにしても毎月一定額の負担が発生したりします。設備投資と返済計画を甘く見積もると、事業が伸びているのに手元資金が減るという悪循環に陥ります。
社長が今日からできる「キャッシュフロー改善アクション」
キャッシュフローの問題は、正しく理解すれば必ず改善できます。今日から実行できるアクションをいくつか紹介します。
- 未来6ヶ月までの資金繰り表を作成する(最低限の経営装備)
- 税金・年払い費用を12等分して毎月積み立てる
- 入金サイトの改善や前払い・早期支払い割引交渉を行う
- 設備投資前に「返済+運転資金」の総額を必ず試算する
- 月末残高を“最低限必要額”として設定し、常に確保する
資金繰りの問題は、事前に準備していれば大きく悪化しません。逆に「知らないまま進む」のが最大のリスクです。キャッシュフローの見直しは、会社を守る予防策であり、社長の不安を減らす最も強力な手段です。
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